COLUMN / AI電話代行をつくる・第1回
AIエージェントで
電話代行をつくる第1回:Amazon ConnectとGrok Voiceを比較
会社にかかってくる電話をAIが受け、用件を聞いて担当者へ伝える。そんな仕組みをつくるには、何を選べばよいのでしょうか。第1回ではAmazon ConnectとGrok Voiceの違いを整理し、「会話の自然さ・伝言の正確さ・費用」の3つの軸で、導入候補として何を見極めるべきかを考えます。
公開日: / 電話対応の自動化

この記事のポイント
- 現在導入しているAWSの仕組みとGrok Voiceを、会話の自然さ・伝言の正確さ・費用で比較します。
- 今回は公式資料から分かる違いを整理し、次回の通話テストで確かめる項目を決めます。
今回は公式資料に基づく調査です(2026年9月18日時点)。通話テストは未実施で、日本語の精度・応答時間・実際の費用は次回検証します。
なぜ電話の一次受付をAI化するのか
電話の一次受付には、用件を聞くだけでなく、連絡先の確認や担当者への伝言が必要です。この一連の作業をAIに任せ、担当者が問い合わせへの回答に集中できるかを、この連載で確かめます。
受付の手間が減っても、聞き間違いの修正や通知の確認が増えれば効果は限られます。担当者に正しい伝言が届くまでを、検証の対象にします。
今回は、その場で回答する必要のない電話の「受付と伝言づくり」をAIに任せることを考えます。問い合わせへの回答は、通知を受けた担当者が折り返して行います。
この連載でいうAIエージェントは、相手と会話し、不足する情報を聞き直し、受付内容を記録・通知する仕組みです。電話代行そのものの役割は、電話代行を導入するメリットで紹介しています。
全3回を通して、架空の会社「サンプル商事」の代表電話を題材にします。受付の流れは次の6段階です。
- 会社名を名乗り、AIによる受付であることを案内する。
- 相手の会社名・名前を聞く。
- 折り返し先の電話番号、用件、希望する担当者を確認する。
- 内容を復唱し、訂正があれば反映する。
- 担当者へ伝えることを案内して、通話を終える。
- 受付内容と確認できなかった項目を担当者へ通知する。
商品価格の確約、契約変更、予約確定は対象外です。聞き取れない情報は推測で埋めず、「未確認」として引き継ぎます。
比較の出発点:Grokで、今より安く自然に会話できるか
今回の比較は、現在導入しているAWSの仕組みに対して、Grok Voiceが次の選択肢になるかを確かめたい、というところから始まりました。「コストが低く、非常に自然な会話ができる」と聞いたことが、Grokに注目したきっかけです。
費用は同じ通話件数・時間で比べます。会話では、返答までの間、相槌への反応、言い直したときのやり取りに着目します。以下では、それぞれの比較で確認したい点を整理します。
比較軸① 会話の自然さ:待ち方と話し方
例えば、相手が「えーと……営業の方を」と話している途中でAIが返答すると、会話はかみ合いません。反対に、話し終わっても長く無音が続けば、相手は聞こえているか不安になります。
- 01
話し終わるまで待てるか
考え中の沈黙と発話の終了を見分ける動作です。話す順番の受け渡しを「ターンテイキング」と呼びます。
- 02
訂正したいときに止まれるか
AIの説明中に「違います」と話したら、AIが止まって聞き直せるか。これが「割り込み(barge-in)」への対応です。
- 03
聞き取りやすく区切って話せるか
電話番号を一息で読まず、相手が確認できる速さと区切りで復唱することも必要です。
Amazon Connectは、話し終わったと判断する確信度と無音の待ち時間を調整できます。相手が考えている途中にAIが話し始める場合は、割り込みの許可とは別に、この発話終了の設定を見直します。読み上げ側には、間や速度を調整する音声制御タグがあります。AWSの会話・音声設定ガイド
Grok Voiceは、音声を受けて音声で返す方式です。ただし、この方式だけで待ち方まで決まるわけではありません。API連携の例では、声の有無を検出する「VAD」で無音の待ち時間や割り込みを設定します。Builderの画面で同じ設定が使えるかは、検証時に確認します。xAIの音声API資料、LiveKitのxAI連携ガイド
比較軸② 伝言の正確さ:訂正まで通知に反映できるか
機能があることと、自社の電話で使えることは別です。候補ごとに同じ会話を試し、必要な動作ができるかを確認します。
例えば「日本語対応」なら、相手が電話番号を言い直す場面を試します。訂正後の番号を復唱できるか、通知にも正しい番号が残るかまで確認する、という具合です。
現時点では、どちらが日本語の伝言に正確かは判断できません。聞き取り・復唱・通知の3段階を照合し、訂正した内容が最後まで残るかを次回検証します。
比較軸③ 費用:受付後の確認作業まで含める
同じ件数を受け、同じ内容を担当者に届けるまでに、いくらかかるかを比べます。音声AIの料金に何が含まれるかを確認し、電話回線や保存・通知の費用が別なら加算します。
比較する費用
サービス・音声AIの利用料 + 別途かかる電話・保存・通知の費用 + 設定変更や確認にかかる工数
例えば「月100件、平均3分」なら、月300分を共通の試算条件にします。料金に含まれる項目を二重に足さないようにし、検証時の料金表と利用明細から、固定費と通話ごとの費用を整理します。
AIで受けた後の引き継ぎも設計する
AIが受付を終えても、お客様への対応はまだ終わっていません。通知を確認する人、折り返す担当者、不在時の引き継ぎ先を決めておく必要があります。
未対応の電話を見落とさないためのルールは、電話番と社内ルールの決め方を参考にしてください。有人受付も検討する場合は、FirstCallの対応範囲と通知方法をご覧いただけます。
なお、本連載はAI電話受付を試作する企画です。FirstCallで提供中のAI電話サービスを紹介するものではありません。
現時点の見立て:Grokへの期待を、次回の検証で確かめる
資料からは、会話の待ち時間や割り込みなど、設定・確認すべき点を整理できました。ただし、その設定で実際の電話応対がどこまで改善するかは、まだ分かりません。次回は同じ受付台本で両サービスを試し、会話と伝言にどのような違いが出るかを確かめます。
次回の検証と全3回の流れ
次回のPoC(実現性を確かめる試作)では、Amazon ConnectとVoice Agent Builderに同じ受付ルールを設定し、同じ日本語の台本で電話をかける計画です。
- 接続条件を確認する。利用権限、日本の電話番号や既存番号からの接続、記録・通知先を確認します。APIを使う場合は、その認証と調整できる設定も調べます。
- 同じ台本を繰り返し試す。正常な受付に加え、相槌、言いよどみ、番号の訂正、雑音、途中切断を試します。社内のテスト番号と架空データを使います。
- 録音・受付記録・通知を照合する。話した内容が正しく伝わったか確認し、失敗した場面と設定変更を記録します。
応答時間は「相手が話し終えた時点から、電話でAIの返答が聞こえ始めるまで」にそろえ、中央値と遅いケースを確認します。あわせて、話を途中で遮った回数、訂正時にAIの音声が止まるまでの時間、必須項目の正確さ、通知成功率、1通話の費用を記録します。
ブラウザでの試用しかできない場合は、電話回線を通した結果と分けて報告します。利用したモデル・音声・接続経路・設定値も残し、どの条件での結果かを示します。
通話テストで確認する7つの場面
- 01
「えーと」で考える
「えーと……担当の方に」と間を置く。話の途中でAIが返答を始めないか確認する。
- 02
「はい」と相槌を打つ
説明中の相槌だけで会話が進んだり、意図せず説明が止まったりしないか確認する。
- 03
電話番号を区切って伝える
番号の途中で少し黙る。最後まで待ち、桁を落とさず復唱できるか確認する。
- 04
AIの復唱中に訂正する
「違います、末尾は5678です」と遮る。再生が止まり、訂正後の番号が通知に残るか確認する。
- 05
会社名・住所・製品名を読む
固有名詞や「1-1-1」「S3」などを使い、聞き取りと読み上げをそれぞれ確認する。
- 06
無言・雑音・途中切断
聞き返しを繰り返しすぎないか、未確認の情報を推測で埋めずに残せるか確認する。
- 07
確認してから引き継ぐ
名前・連絡先・用件を復唱し、訂正を反映してから通知する。通知失敗も記録に残す。
公式資料で分かること、通話で確かめること
公式資料では、Amazon Connectの発話終了・割り込み・読み上げの設定と、Voice Agent Builderの画面設定・電話接続・通話記録などを確認しました。Builderはベータ版として発表されており、検証時には利用できる機能と接続条件を改めて確認します。
応答時間の数字は、条件をそろえて読む
「最初の音声が出るまでの時間」と「電話の相手が話し終えてから返答を聞くまでの時間」は、測定の始点と終点が異なる場合があります。モデル、言語、回線、測定方法が違う数値を、そのまま速さの順位には使えません。
Amazon Nova 2 Sonic単体の測定値も、Amazon Connect agentic voice全体の実測値としては扱いません。本連載では、2サービスに同じ日本語の受付をさせて確かめます。
電話の一次受付を見直したい方へ
有人電話代行の対応範囲や通知方法について、現在の運用に合わせてご相談いただけます。